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飯山市森林農地整備課 鳥獣対策係
係長 宮本 幸成 様、主査 藤井 浩之

近年、全国各地でクマの出没が相次ぎ、自治体にとって大きな課題となっています。長野県北部に位置する飯山市でも、市民から寄せられる目撃情報への対応や注意喚起、被害防止対策など、鳥獣対策の重要性は年々高まっています。
その最前線に立つのが、飯山市森林農地整備課 鳥獣対策係です。限られた人員で市民の安全を守るため、新たな取り組みとして導入したのがAI獣害検知システム「クマミるAI」。導入の決め手となったのは、AIという新しい技術ではなく、「子どもたちを守る」という明確な目的でした。
今回は、飯山市森林農地整備課 鳥獣対策係の宮本幸成係長、藤井浩之主査に、飯山市の鳥獣対策やクマミるAI導入の背景、今後の展望についてお話を伺いました。

目次

3人体制で挑む鳥獣対策の課題と現状

まず、現在の鳥獣対策係の業務について教えてください。

飯山市では、誘引木となる果樹の伐採や緩衝帯の整備、電気柵設置への補助、千曲川河川敷の樹木伐採など、野生鳥獣が人の生活圏へ近づかないような対策を進めています。しかし、こうした業務を担う鳥獣対策係は実質3人体制。通常業務に加え、クマの目撃情報が入れば現場へ向かい、休日も対応しています。
通報を受けると、防災無線や情報共有アプリ「けものおと」で市民へ注意喚起を行い、すぐに現場へ向かいます。しかし、到着した頃にはクマが移動していることもあったり、通報が重なる日には限られた人員で優先順位を判断しなければなりません。目撃情報の多くは市民からの証言であることも加えると、 現場の状況を迅速に、かつ客観的に把握することに課題がありました。
また、飯山市では現場対応だけでなく、市民や教職員向けの講習会を開くなど啓発活動にも注力しています。近隣自治体や長野県とも日頃から情報を共有し、行政区域を越えて連携しながらクマ対策を進めています。

現場へ向かう鳥獣対策係

最初に決めるべきは「誰を守るか」だった

クマミるAIを知ったきっかけを教えてください。

きっかけはインターネット検索でした。新たな鳥獣対策を探す中でクマミるAIを知りましたが、第一印象は「本当にそこまで精度があるのだろうか」という疑問でした。
一方で注目したのが、「クマを検知した動画だけ保存し、人が写ったものは削除する」という仕組みです。従来の監視カメラは、人や車など動くものをすべて録画するため、必要な映像を探すだけでも手間がかかります。必要な時だけ動画が残されることで、効率的に運用できるのではないかと感じました。
設置場所として最初に選んだのは、市内の保育園です。園児たちは日常的に散歩へ出かけるため、朝のうちにクマの接近を把握できれば、「今日は散歩を中止する」「コースを変更する」といった判断ができ、子どもたちや保育士の安全につながります。
一方で、保育園への設置では個人情報への配慮も欠かせません。通常の防犯カメラのように24時間録画するのではなく、クマを検知した時だけ録画される仕組みであることを保護者の皆さんへ丁寧に説明したことで、安心して受け入れていただくことができました。

保育園遊具前のクマミるAI

導入までに苦労したことはありましたか。

検討開始から導入までは約3か月。設置工事もスムーズに進み、大きなトラブルはありませんでした。一方で、最も悩んだのはカメラの設置場所と角度です。園舎を映すのではなく、クマがどこから現れるかを想定しながら、侵入経路を見渡せる位置や向きを検討しました。
また、導入前には保護者への説明を丁寧に行い、「クマを検知した時だけ録画される仕組み」であることを十分に理解していただいたことで、導入後にネガティブな声が上がることはありませんでした。操作性についても満足しており、直感的に使えるため、特別な操作を覚えることなく運用を始められました。
今後は、撮影できる画角がさらに広がれば設置台数を抑えられ、感知距離が伸びれば、より早い段階でクマの接近を把握できるようになります。性能が向上することで、現場の安全性はさらに高まると期待しています。

園舎前のクマミるAI

クマ対策は一部署で守る時代から、行政全体で守る時代へ

今後はどのような活用を期待していますか。

現在は保育園で運用していますが、今後はキャンプ場や公園、観光施設など、人が集まる場所への活用も期待しています。ただし、鳥獣対策係だけでカメラを管理できる台数には限界があります。施設を所管する部署や現場の担当者が主体となって運用し、鳥獣対策係をその取りまとめ部署として機能する、クマミるAIによって得られた情報は、鳥獣対策係だけではなく、保育や教育など関係部署とも共有できるようになり、行政全体で安全対策を考えるきっかけにもなっています。
同じ課題を抱える自治体が全国に数多くおられると思いますが、人からの目撃情報だけでは、どうしても限界があるため、客観的な情報を見える化し、複数人で共有しながら判断することがを目指して運用される必要があることを知っていただきたいです。クマ対策は、人手だけで解決できるものではありません。だからこそ、現場の状況を客観的に把握し、その情報を関係者が迅速に共有することが、これからの自治体の鳥獣対策には欠かせません。

クマミるAIの設置様子

守るべき人を決めた先に、新しいクマ対策がある

クマによる被害をなくすためには、現場へ駆けつける人を増やすだけでは限界があります。重要なのは、「いま、どこで、何が起きているのか」を客観的に把握し、その情報を必要な人へ素早く届け、次の判断につなげることです。
飯山市では、最初に守るべき対象を子どもたちと定め、保育園への導入からスタートしました。そして今では、その情報を鳥獣対策係だけでなく、保育や教育など行政全体で共有し、安全対策へ生かそうとしています。
クマミるAIは、クマを検知するためのカメラではありません。
人の経験や勘だけでは補えない情報を「見える化」し、地域全体で安全を守るための判断を支える、新しい目として活用されています。飯山市の取り組みは、限られた人員で鳥獣対策に取り組む全国の自治体にとって、「誰を守り、どう守るか」を考える一つのヒントになるのではないでしょうか。

クマミるAIの設置様子
中村 乙彦

インタビュアー

株式会社ぬえ

中村 乙彦

京都市出身。立命館大学理工学部に通いながら、学生時代のほぼすべてをバンド活動に捧げる。
その後IT業界に入り、行政・教育機関・ケーブルテレビなどを対象とした営業・営業企画に従事。ITとクリエイティブの領域を横断しながら、人や企業、地域の可能性をつなぎ貢献するための営業活動、事業開発に取り組んでいる。